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珪化木とは——見分け方と、神代木との違い

川原で拾った黒い塊。木目のような筋がある。これは珪化木なのか、石炭なのか、ただの石なのか——。木を挽いて百三十年余りの製材所が、「木の化石」珪化木の正体と見分け方、そして混同されやすい神代木・埋もれ木との違いを、まとめて解説します。

珪化木の定義——木の化石

珪化木(けいかぼく)は、木の化石です。地中に埋もれた木の細胞やそのすきまに、地下水に溶けた二酸化ケイ素(シリカ)が長い年月をかけて沈着し、木の組織と置き換わってできます。火山灰に埋もれた木や、火山活動でシリカを多く含んだ地下水に浸かった木から生じることが多いとされます。英語では petrified wood——「石になった木」。木石、木化石、材化石とも呼ばれます。
 
面白いのは、石に置き換わる過程で、木の記録がそのまま写し取られることです。年輪、導管、節の痕。見た目は紛れもなく木なのに、手に取ると石の重さと硬さがある。木が生きた年月の記録が、鉱物というかたちで封じられたもの——製材所の言葉で言えば、来歴が石で保存された木です。
 

見分け方——珪化木か、石炭か

川原や工事現場で拾われるものの多くは、珪化木か、石炭か、黒く濡れた木のどれかです。道具がなくても、次の点でおおよそ見分けられます。

見るところ

珪化木

石炭

重さ

石として重い。同じ大きさの木の何倍もある

見た目より軽い

硬さ

硬く、釘やナイフでは傷がつきにくい

釘で傷がつき、砕けやすい

割れ口

石の割れ方。木目が石の表面に残ることが多い

貝殻状につるりと割れ、黒く光る

沈む

沈むが、手が黒く汚れやすい

いちばんの早道は、重さと硬さを手で確かめることです。写真だけでは判別しきれないことも多く、当社にご相談いただく場合も、手にしたときの重さの印象と、木目の見える面の写真をあわせてお送りいただいています。なお「燃えるかどうか」でも区別できますが(石炭は燃え、珪化木は燃えません)、火気での確認はおすすめしません。
 
ただし、この表はあくまで目安です。同じ一本のなかでも、シリカが十分に入った部分と、炭のほうへ寄った部分が混じることがあります。実際、珪化木の炭化の進み方は石炭のそれとよく似ているという研究もあり、両者は無関係な別物というより、同じ埋没からの分かれ道と考えたほうが近い。判断に迷う塊は、珍しいものではありません。

神代木・埋もれ木との違い——ここがいちばん大事

珪化木とよく混同されるのが、神代木(じんだいぼく)と埋もれ木です。神代木は、火山の噴火や土砂崩れ、川の氾濫などで地中や水中に埋もれ、空気を絶たれて腐らないまま、長い年月を経た木材のこと。木のタンニンが土中の鉄分や鉱物と反応して、灰褐色から墨に近い黒まで、深い色に変わります。神代杉、神代欅、神代楡——いずれも銘木として珍重されてきました。埋もれ木も、おおむね同じ仲間の呼び名です。
 
埋もれていた年数は、数百年のものから数千年、時にそれ以上まで幅があります。銘木の世界では千年以上を目安とし、それに満たないものを「半神代」と呼び分けることもあります。多くは道路工事や河川改修のときに、たまたま掘り出されたものです。
珪化木は石なので、製材できません。神代木はまだ木なので、挽けます。
表(3列・5行)

珪化木

神代木・埋もれ木

正体

石(木の組織がシリカに置換)

木(埋もれて変色した木材)

時間の目安

数百万年〜という地質の時間

数百年〜数千年

刃は立つか

立たない。製材の刃が欠ける

立つ。製材・加工ができる(鉱物が沈着し、刃を傷めやすいことはある)

主な用途

観賞・標本・磨いて置物に(石材の領域)

製材して一枚板・家具・工芸・茶道具に

地中や水中に埋もれた木の、三つの行き先を示した図。数百年から数千年、空気を絶たれて腐らなかったものは神代木・埋もれ木になる。まだ木のままで刃が立ち、灰褐色から墨に近い黒へ変わり、年単位の乾燥を経て一枚板や家具、工芸に使える。数百万年以上、シリカを含む地下水や火山灰のもとに置かれたものは珪化木になる。石なので刃が立たず、石として重く、木目が石の面に残り、観賞や標本に使われる。地圧と地熱を受け、セルロースの少ない部分ほど炭化したものは石炭になる。見た目より軽く、釘で傷がつき、貝殻状に割れて黒く光る。田中製材所が扱えるのは、いちばん左の神代木・埋もれ木だけ。同じ一本のなかで珪化した部分と炭化した部分が混じることもあり、この図は目安である。

製材所から見た珪化木

正直に言えば、珪化木は私たちの機械では挽けません。挽けば刃が飛びます。それでも製材所が珪化木に惹かれるのは、木口——木の切り口——の目を読む仕事をしてきた者にとって、石の中に残る年輪や導管の痕が、そのまま「読める」からです。この木は何の仲間か、どんな育ち方をしたか。数百万年前の木の一生が、石の面に開いている。
 
木は使えば減り、いずれ朽ちます。珪化木は、その定めの外に出てしまった木です。だからこそ、いま挽ける木を、来歴ごと大切に使うことの意味を、珪化木は静かに教えてくれます。
 
ただし、掘り出した神代木がすぐ使えるわけではありません。長く水を含んでいた材は、落ち着くまでに年単位の乾燥が要り、そのあいだも通常の木とは違う縮み方や狂いが出ます。挽くときも、削りすぎればあの色が消えてしまう。時間と場所を持っている者にしか扱えない材だ、ということです。
 
そして神代木や埋もれ木は、当社の仕事のまっすぐ真ん中にあります。地中や水中で数百年、数千年を過ごした木は、掘り出された時点では「処分に困るもの」の顔をしています。台風で倒れた木も、解体で外された梁も、同じ顔をしてやってきます。それを引き受けて素材に戻し、来歴を書いて次の使い手へ渡す——終わりを、次の始まりに変える。製材所の商いの大半は、じつはこの種類の仕事でできています。

よくある質問

問1 拾った石が珪化木かどうか、見てもらえますか。

答1 写真での簡易な見立てはお受けしています。手にしたときの重さの印象と、木目の見える面の写真があると判断しやすくなります。学術的な鑑定は、博物館や地質の専門機関にお尋ねください。

問2 珪化木を製材・加工してもらえますか。

答2 珪化木は石のため、当社では製材できません(木工の刃が立ちません)。切断や研磨は、石材・鉱物の設備を持つ専門業者の領域になります。

問3 神代木・埋もれ木は買い取ってもらえますか。

答3 ご相談ください。状態・樹種・大きさを拝見したうえで、買取や、製材して一枚板・工芸材として活かす道をご案内します。なお当社は、見立てを頼まれる立場と、買い手になる立場を、同じ手で兼ねうる商売です。だから最初に、いまどちらの立場でお話ししているか(見立てなのか、買取の値なのか)をお伝えします。役割と値を先に開くのが、当社の決めごとです。

問4 珪化木に価値はありますか。

答4 大きさ、木目の残り方、色、磨いたときの表情によって、観賞用・標本として取引されることがあります。ただし市場の値段は物によって幅が大きく、当社の専門は木材のため、金銭的な評価は鉱物・化石の専門店にお尋ねいただくのが確かです。

問5 庭や工事現場から、黒い木のようなものが出てきました。

答5 水を含んで黒くなっただけの木、炭、神代木・埋もれ木、珪化木——どの可能性もあります。急に乾かすと割れることがあるので、乾かさずに、写真とあわせてご相談ください。

 

珪化木は挽けません。神代木なら、挽けます。

木の終わりに立ち会ってきた製材所です。掘り出したもの、倒れたもの、外したもの——どう扱えばいいか分からない木があれば、ご相談ください。